津軽半島 竜泊ライン:昭和の偉業をめぐる道

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右か、左か?津軽半島

「津軽りんご」や「津軽三味線」で知られる津軽地方は青森県にあります。青森県といえば本州の最北端に2本の角のように飛び出た半島を思い浮かべる人も多いでしょう。

津軽半島と下北半島。昔、社会科の授業で習ったので名前の聞き覚えはあります。では、津軽半島はどっち?

正解は地図の左側、短い方の半島です。その先端は龍飛崎。ここからは海をはさんで20kmほど先に北海道が見えます。また、この海の下には青函トンネルが通っていて、津軽半島には本州側のトンネルの起点があります。

大まかな地理は把握できたけど、何があるかちょっとイメージしにくい津軽半島。

実は昭和の時代には青函トンネルの開通工事や演歌『津軽海峡冬景色』のヒットなど、割と注目される機会が多かった土地でもあります。今回はそれらの偉業をたどりながらのツーリングです。

まず、ライダーの習性として先端の龍飛崎を目指すのは間違いないのですが、どのようなルートでアクセスするかで悩みます。それはつまり右回りか、左回りか?それとも単純往復?

日程やスタート地点が人によって異なるので一概にこれがいいとは言い切れませんが、基本的には時計回り、反時計回りでの周遊がおすすめ。同じルートで往復するなら日本海側のR339を選んだ方が楽しめそうです。

国道339号線「竜泊ライン」

竜泊ラインは津軽半島随一の絶景ロード。R339のうち、半島先端に近い小泊地区から龍飛崎までの約20kmの区間です。

十三湖のほとりからは巨大風車群が見えます。

五所川原市からR339を北上し、十三湖を抜け、小泊地区の交差点が竜泊ラインの入り口です。住宅地を抜けるとちょっとしたワインディング区間があり、やがて日本海と「道の駅こどまり」が見えてきます。

竜泊ラインのシーサイド区間。

6.5kmほど海と並走したところで上り坂が始まったかと思いきや、右に90度折れて海に背を向けます。ここから本格的なワインディング区間に突入。ヘアピンの連続でぐいぐい標高を上げていきます。

振り返ると日本海が眼下に広がっています。

北上するルートだと、カーブを抜けていくのに集中して気付きにくいのですが、振り返ってみるとそこには道の向こうに日本海が広がる景色が。逆に南下するルートだったら、日本海に飛び込んでいくように下って行ってからのヘアピンが繰り返されます。

鳥瞰台からは日本海をバックにワインディングコースを一望。

竜泊ラインのハイライトはこのルート最高地点にある眺瞰台。今まで上ってきた道の向こうに日本海が広がります。絶景を縫うように通っていくワインディングを眺めていると、ここからまた下って行きたくなるほどです。

昭和の名曲に歌われた竜飛岬

竜泊ラインの終点、龍飛崎。その入口には観光客用の大きな駐車場があり、その向かいに『津軽海峡冬景色』の歌碑があります。

『津軽海峡冬景色』は1977年にリリースされた石川さゆりの代表曲。当時の音楽賞を数多く獲得した昭和の名曲です。

曲のタイトルの通り、舞台は津軽海峡。東京から北海道に帰るもの悲しい旅情が歌われています。当時は新幹線も青函トンネルもなかったため、東京上野から夜行列車で青森まで行って、そこから函館行きのフェリー(青函連絡船)に乗り継ぐルートが一般的でした。

曲の1番は青森駅に降り立ったときの旅情が、そして2番ではフェリーから見える竜飛岬が歌われています。

赤いボタンを押すと曲が流れてきます。

歌碑には曲の再生ボタンが付いていて、竜飛岬が歌われる2番が流れてきます。実際、曲の中では「北のはずれ」と称され、「はるかにかすみ見えるだけ」だった竜飛岬ですが、まさにその現場である津軽海峡を眺めながら聞く名曲は心に沁みます。

ちなみに、1番の「私もひとり連絡船に乗り」というくだりにちなんで、青森市の「青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸」の横にも歌碑があります。

「龍飛崎」?「竜飛崎」?

津軽半島の先端にあるのは「龍飛崎」灯台。先述の『津軽海峡冬景色』に登場するのは「竜飛」岬。

「龍飛」と「竜飛」、どっちが正しいの?と思った人はわりと多いようで、ネットで調べてみると、正式は「竜飛」、地図上は「龍飛」、でもどっちも正しいという意見が主流のようです。

ちなみに「竜飛岬」は曲の中にしか使われておらず、実際に行ってみるとほとんどは「崎」が使われています。(この投稿では「竜飛岬」を除いて「龍飛」で統一しています)

日本にここだけ「階段国道」

龍飛崎への途中でひと際目を引く「階段国道」の大きな看板。ここは全国の国道で唯一、歩行者用の階段しかない区間です。

車両はもちろん通れません。車両用のバイパスが別にあって、旧国道の扱いというわけでもありません。現役の国道でありながら、階段しかないのです。

R339は弘前市から始まって、津軽半島の日本海側沿いを北上し、龍飛崎をぐるっと回りこんで10kmほど南下した外ヶ浜町まで続いています。この「ぐるっと回る」区間が「階段国道」。

バイク乗りの界隈では昔から知られているスポットですが、SNSが普及した昨今、階段と国道のおにぎり看板のシュールさで話題を呼んでいます。

なぜここだけ階段になっているのか調べてみましたが理由は定かではありません。国道指定されるときに地図上だけで確認したからとか、青函トンネル工事のため、後から整備する前提で指定したけど有名になりすぎてそのままにしているなど、さまざまな説があるようです。

半島の突端にある帯島は本土と橋でつながっています。

全長は約388m、高低差約70mを362段でつなぎます。階段はきれいに整備されていますが、なかなかの急勾配です。灯台側から下っていくと、道の両側は木で囲まれていて眺望はありません。ちょうど半ばあたりにある広場から眺望が開け、半島の突端にある帯島を見えてきます。

最後は民家の真横を通っていきます。

後半は高低差が激しいためか、何度かつづら折りで階段を下りていき、最後は民家の横を通り抜けるようにして漁港に出てきます。

帯島側の案内看板。

階段国道の下側には案内看板があるぐらいで売店や飲食できる場所はありません。ひとしきり休憩したら今度は362段を上って引き返すだけとなります。

全国で唯一の場所ではあるのですが、実際は急峻な階段を往復するだけというストイックな観光地(というか国道)です。国道の標識がなければただの階段なので、息を切らしながら「一体何やってんだ?」という思いが湧いてくるかも。

時間がなかったり、体力に自信がなかったりする場合は、入口のおにぎり看板と階段だけ写真に収めておくだけでも話のネタにはなります。

青函トンネル記念館で世紀の大事業を学ぶ

青函トンネルは着工から約24年の歳月をかけて1988年に完成した昭和の大事業。全長約54 kmのうち、23.3kmの区間を津軽海峡の海底下に通すという難工事でした。

青函トンネル記念館ではその大プロジェクトのあゆみが映像や立体モデルで紹介されています。

トンネルの大きさや地形とトンネルの関係がわかる立体モデルが展示されています。

一番の見どころは体験坑道。「青函トンネル竜飛斜坑線 もぐら号」で斜度14度の斜坑を海面下140mまで下っていき、実際の坑道を体感することができます。

まとめ

青森県といえば本州最北端の大間崎を目指すライダーも多いですが、今回はあえて津軽半島の見どころを紹介してみました。

ハイライトはなんといっても竜泊ライン。ダイナミックなワインディングから見える日本海の景色は爽快です。

海の向こうに突き出ているのは小泊岬。その付け根が竜泊ラインのスタート地点です。

龍飛崎から北海道を間近に眺めたら、階段国道にチャレンジしたり、『津軽海峡冬景色』の歌碑や青函トンネル記念館などいずれも昭和を象徴するスポットを回って、その当時に想いを馳せてみたりするのもいいでしょう。

北海道はもう目の前!

青森市内から半島を周遊するルートで約200km。観光や食事を楽しみながら1日かけてゆっくり回るのがおすすめです。

龍飛岬をぐるっと回って、R280を南下していくときは八甲田の山々が見えてきます。

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