アジフライの聖地 松浦

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日本各地には「聖地」と呼ばれる場所がたくさんあります。

宗教的に格式が高い場所、何かの発祥地だったり、特定の産業の拠点だったり、アニメの舞台も「聖地」と呼ばれています。

さまざまな「聖地」があるなかで、今回は食にスポットをあてた「聖地」を訪れてみます。

メニューはアジフライ。昔からある一品ですが、唐揚げやトンカツのようにメジャーではなく、揚げ物界では割と地味なポジションにいます。

そんなアジフライを聖地と宣言する松浦市が気になって訪れてみました。

松浦ってどこにある?

松浦市は長崎県の北部にあり、本土と沖合いに浮かぶ5つの島で構成されています。

西は世界遺産を持つ平戸市、東は焼き物で有名な伊万里市に挟まれ、さらに南は名勝九十九島がある佐世保市と接しています。

このあたりで名物といえば「佐世保バーガー」ぐらいしか思い浮かばず、個人的に正直これといった印象はありませんでした(ゴメンナサイ)。

2019年「アジフライの聖地」を宣言

2019年、松浦市は「松浦アジフライ憲章」掲げ、自らを「アジフライの聖地」と宣言しました。

日本有数の漁場である玄界灘に面した松浦市はアジやサバの水揚げ量が全国トップクラス。鮮度の高いお刺身が人気です。

しかし、港町なら全国どこにいってもお刺身がおいしいに決まっている。

そこで当時の市長は考えました。お刺身でもおいしいアジをフライで提供してみてはどうか?

一般的にアジフライといえば、薄手で独特の臭みが思い出されますが、松浦のアジフライは身がふっくらしていて臭みがない。

市長はそれに気付いていました。地元の人にとっては当たり前だけど、実は松浦のアジフライは非常にレベルの高い一品だったのです。

「アジフライと、ゆかいな仲間たち」

ガイドブックは定期的に改版されているようです。

聖地と名乗るだけあって松浦市内にはアジフライを提供する飲食店がたくさんあります。

まずは「アジフライと、ゆかいな仲間たち」というガイドブックでリサーチしましょう。主要観光施設や加盟店で無料配布されています。

ガイドブックにはアジフライの聖地を支える地域の人たちの紹介と、飲食店マップが掲載されています。

どこに行こうか迷いますが、ここに掲載されているのお店ならまず間違いはないでしょう。

なぜなら、これらのお店は「アジフライの聖地松浦連携店」だから。

アジフライ憲章」にしたがって地元産のアジをノンフローズン(またはワンフローズン)で、揚げたてアツアツを提供してくれます。

実食、聖地のアジフライ

今回、松浦市で実食した3つの店舗を紹介します。どの店もこれまでのアジフライの概念を吹き飛ばすほどの美味しさでした。

海道

市内の「島エリア」、鷹島にあるお店です。島までは大きな橋が架かっているので陸路で行けます。

メニューはアジフライと海鮮丼がメイン。お刺身とのセットもできます。

「魚島来めし」も気になるけど、ここはアジフライ定食で。

このお店が今回の旅ではじめての松浦アジフライだったのですが本当に驚きました。身は肉厚かつジューシーで、これまで食べてきたアジフライとは一線を画すおいしさです。


うなぎ割烹 和(なごみ)

市内中心部にあるうなぎ料理のお店ですが、アジフライも提供しています。

注文はもちろんアジフライ定食。厚みのある切り身が3切れも盛られています。ソースは醤油ベースの特製ソースとタルタルソースの2種類。

どちらで食べてもおいしいですが、魚の脂のうまみが凝縮されているので、塩で行っても行けると思います。

「割烹」というと敷居が高いイメージですが、お値段は意外とリーゾナブル。お店の雰囲気も高級感があって、アジフライがさらにおいしく感じます。


魚市食堂

松浦魚市場内にある市場で働く方たちのための食堂です。一般の利用も可能ですが、場内で大口の弁当の注文が入ったときは一時閉店されることもあるようです。

たくさんのメニューがある中にアジフライが置いてある感じ。

定食は大盛ごはんと大量のタルタルソース。アジが水揚げされている場所だけあって鮮度が違います。

テーブルにはソースとしょうゆが設置されているのでタルタル以外でも楽しめます。

お店の向かいには、「大漁レストラン 旬」があります。魚市食堂が一時閉店しているときはこちらでもアジフライが楽しめます。

奥が魚市食堂で、手前が大漁レストラン旬。

アジフライモニュメント

食べものが有名なスポットは「あ~、おいしかった」で終わるところが多いのですが、松浦市は違います。

街中を歩いていても単なる名物では終わらせないという熱量を感じます。その一番の象徴となるのがアジフライの石工モニュメント。

一般的にモニュメントといえば、文字が刻まれた石碑や抽象的なオブジェ、人物やキャラクターを想像しますが、これはまさにそのまんまアジフライ。

アジフライモニュメントは市内5か所に設置(2024年現在)。そのうち2つは道の駅にあるので立ち寄ったついでに写真に収めておきましょう。


道の駅 鷹ら島(たからじま)

玄界灘に浮かぶ鷹島の入口、鷹島肥前大橋を渡ってすぐのところにある道の駅です。

この道の駅のウリは魚。アジだけでなく、マグロやブリも売られています。ここで一度食べてみて、気に入ったらオンラインストアで注文もできます。

アジフライバーガーは週末限定。

定食やアジフライバーガー、お持ち帰りの調理用アジフライもあります。マグロバーガーやサバフライなど、アジ以外の魚も充実しています。

調理用のアジフライ。下の段のサバフライも気になる。

アジフライモニュメントは建物の奥の方にひっそりと建っています。鷹島肥前大橋をバックにして、いい画が撮れます。


道の駅 海のふるさと館

市内中心部からほど近い海沿いにある道の駅です。どちらかというと観光客向けの道の駅なので、おみやげを買うならこっちがおすすめです。普通の長崎みやげから海産物まで一通りそろっています。

訪れた日は残念ながらお食事処が休業中。

もちろんアジフライが食べられるお食事処もあるし、お惣菜コーナーでもアジフライが売られています。

アジフライモニュメントは駐車場のすぐ横にあります。アジの部分は道の駅 鷹ら島よりやや小さいですが、こちらはレリーフのように装飾されています。

箸を持つ手がリアルに再現されている。

市内の散策スポット

本土と鷹島をつなぐ鷹島肥前大橋。

松浦市内にはアジフライ以外にも見どころがたくさん。食後の腹ごなしに立ち寄ってみるのもいいですし、ただただバイクで爽快なシーサイドを走るのもいいでしょう。


松浦水軍の兜

R204沿いの調川道路公園の入り口にある大きな兜のモニュメントです。台座には「松浦党水軍」の名が刻まれています。

松浦党は、平安時代から戦国時代にかけてこの地域で活躍した武士団。

古くは源平合戦に参戦し、元寇では蒙古軍の襲来に応戦。江戸時代には肥前平戸藩の藩主、明治に入ってからは伯爵家として扱われるなど、この地域の歴史と密接に結びついている一族です。

モニュメントの向かい側は海。水軍と交易で名を馳せた松浦党らしく、少し高い台から兜が水平線を眺めています。


松浦市立埋蔵文化財センター

鷹島は「元寇終焉の地」とされています。あの神風が襲って蒙古軍の船が多く沈んだと言われているのがこの島の南岸です。

道の駅 鷹ら島にあるモニュメント。

この一帯の海には蒙古軍の船や武具などが埋没していて、「鷹島神崎遺跡」として日本では珍しい海底遺跡に指定されています。

当時、この海を埋め尽くすほどの大群が押し寄せたらしい。

埋蔵文化財センターは海底から発掘された遺物の脱塩、保存処理を行う施設。ガイダンス施設と保存処理施設の2つの建屋で構成されています。

教科書では数行で終わる話だが、ここでは元寇の詳細な歴史を学べる。

ガイダンス施設では遺物の展示を見ながら元寇の歴史を振り返ることができます。また、保存処理施設では蒙古軍の船が使用してたとされる大碇や、実際の作業現場を見ることができます。

元寇といえばこの絵が有名。「てつはう」は小玉スイカぐらいの大きさで意外と大きい。

アクセス

松浦市は長崎県にあります。「九州はさすがに遠いな~」という方は飛行機で福岡まで飛んで、レンタルバイクはどうでしょうか?

九州の玄関口、福岡は全国各地からのフライトが就航しています。LCCも多いのでわりとお手軽です。

そして、福岡に降り立ったらレンタルバイク。空港の近くにも店舗があるので、到着後すぐに出発することも可能です。

今回はホンダドリーム博多でレンタルしました。

福岡市内から松浦市までは約2時間弱なので、フライトの選択によっては日帰りもできなくはありません。ただ、周辺には平戸、佐世保、伊万里など見どころも多いので、泊まりで行く方がオススメです。

まとめ

道の駅で売られていた「お菓子なアジフライ」。

今回は昼前に松浦入りして、まずランチでアジフライ。夜は市内に宿泊してアジフライ。朝は市場でアジフライと、一気に3食いただきました。

どのお店のアジフライも肉厚でふっくらしていて、魚特有の臭みはゼロ。3分の3で大当たりでした。

おそらく松浦市内ではこのレベルのアジフライは当然で、どこの店で食べてもおいしいと思われます。

ちなみに、朝はしょうゆ、昼はソース、夜はタルタルと味付けを変えたので飽きることはなかったです。味付けの変化を楽しめるのもアジフライならではですね。

「おいしいものを食べに行く」というのは ツーリングに出かけるには十分な理由になります。絶品アジフライを食べたくなったらすぐに旅の計画を。

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