うなぎパイファクトリー:「夜のお菓子」本当の秘密

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浜松みやげの定番「うなぎパイ」

浜松の定番みやげ、うなぎパイ。和のうなぎと洋のパイを組み合わせた意外なネーミングのこのお菓子は何の変哲もないパイのように見えますが、地元浜名湖の名産であるうなぎのエキス(粉)が生地に練り込まれているのが特長です。

今でこそ「○○エキス入り」のようなお菓子はよく見かけますが、うなぎパイが登場したのは1961年(昭和36年)。当時は相当斬新だったに違いありません。

この時代、日本は高度経済成長の真っただ中。東海道新幹線や東名高速道路が開通し、観光や出張で人の往来が増える中、その珍しさもあって売り上げが急増。

「夜のお菓子」という意味深なキャッチフレーズも相まって、今や浜松からも飛び出して県を代表する定番みやげとなっています。

うなぎパイファクトリーとは?

うなぎパイは、もともと浜松市に本社を置く有限会社春華堂が製造・販売をしていましたが、あまりの売れ行きに同社から製造部門が株式会社うなぎパイ本舗として独立。この会社がうなぎパイファクトリーを運営しています。

浜松市の中心部からほど近い工業団地内を奥まで進んで行くと、建物に大きく「浜名湖名産・夜のお菓子 うなぎパイ」と書かれた建物が見えてきます。

敷地内に流れる「うなぎのじゅもん」

敷地内は工場とは思えないおしゃれな外観。そこで目を引くのが「うなくん号」。うなぎパイを使ったスイーツを提供する移動カフェです。「うなくん」はうなぎパイのマスコットキャラクターです。

この付近では「うなぎのじゅもん」というキャッチーな音楽がループで流れていて、スイーツを食べながらしばらく聞いていると耳から離れなくなってきます。ちなみに、作詞・作曲は数々の名曲を生み出した小椋佳さんが直々に歌われています。

うなぎのじゅもん体操
https://www.youtube.com/watch?v=605sk5HEWj0

工場見学の受付

入るとすぐに受付と売店があります。

エントランスを入っていくと小さな受付台とその横に和風な店構えをした売店があります。工場感はまったくなく、まるでホテルのロビーのような雰囲気です。

そして、ホテルさながらに受付用紙の記入をうながされます。受付は予約なしの自由見学と要予約ので用紙が分かれています。

自由見学は予約不要でしかも無料。有料のツアーは予約制で1人500円です。

有料のツアーは「ファクトリーツアー」と「窯出しうなぎパイツアー」の2つがあり、予約制です。今回はコンシェルジュ付きのツアーに加えて、焼き立てのうなぎパイを食べられる「窯出しうなぎパイツアー」に参加します。

ちなみに、有料のツアーは工場のスケジュールにあわせて開催されるため、月に数回の実施となっています。申し込みは専用サイトで毎月下旬ごろに翌月の受付が始まるのですが、すぐに枠が埋まるので早めに計画しておくことをおすすめします。

窯出しうなぎパイツアー

このツアーは基本的には自由見学と一緒のコースを回りますが、コンシェルジュの説明が付くので製造工程がよくわかります。また、ツアーの最後には「UNAGI PIE CAFE」で製造ライン直送の焼き立てうなぎパイが振舞われます。

先述のとおり、ツアーは自由見学と同じコースです。先に見てしまうと感動が薄れるので、ツアーが始まるまでは売店や敷地内を散策して時間まで待っておく方が無難です。

「うなくん号」ではうなぎパイを使ったジェラートを販売しています。

ツアーの開始時刻になると、参加者は受付横に集まるようにアナウンスがあります。参加者は20人ぐらい。点呼と簡単な挨拶があってツアーの開始です。

生地は手作り

まずはうなぎパイの製造工程についてコンシェルジュの説明があります。

大まかな工程は生地の仕込み、仕上げ、焼き上げといった流れで想像に難くはありません。しかし、生地の仕込みは製造開始からずっと手仕事で続けられていて、限られた人数の職人だけが担当しているとのこと。

説明ボードは工場で実際に使われていた麺棒でデコレーションされています。

特に生地の練り上げには熟練の技が必要で、麺棒で捏ねては折り重ねる作業を繰り返すことで約9000もの層を作り上げているそうです。

うなぎパイ「秘伝のタレ」

実際に見学できるのは焼き上げの工程から。

3か所の小窓からパイが焼き上がっていく様子を見られます。

通路にそって小窓が設置されていて、そこからベルトコンベアのオーブンを流れていく様子を見ることができます。細く切られた生地が約3倍ぐらいに膨らんで、焼き色がついて、最後の方はおなじみのうなぎパイの姿になっていきます。

ハケが付いたアームが往復してタレを塗っていきます。

オーブンを通り抜けたあとは「秘伝のタレ」を塗る装置が忙しく動いています。

コンシェルジュがわざわざ「秘伝の」と説明する通り、このタレのレシピは工場内で数人しか知らないそうです。唯一、公開されている情報として隠し味にニンニクが使われているとか。

焼き上げ工程の終わり。ずっと奥まで製造ラインが並んでいます。

ラインの終わりでは人の目で焼き上がりの確認を行っています。

焼き目が均一でないなど、規格外となったパイはラインからはじかれて、アウトレット品として売店で販売されるそうです。見た目こそ規格外ですが、味は変わらず、しかもお徳用なのですぐに売り切れてしまうのだとか。

焼き上げの工程はここまで。次は2階に上って包装と梱包の工程の見学です。

2階へと上がる階段の手すりにはうなぎがあしらわれています。

包装・梱包はスピード勝負

2階からは包装と梱包ラインの全体が見渡せます。

2階からは包装と梱包のラインが上から見渡せます。

ここからはスピード勝負。製造ラインから出てきたうなぎパイたちはすぐに機械で個別包装されていきます。

手前側からうなぎパイが送られてきてあっという間に包装されます。

裸のうなぎパイがマシンを抜けた途端におなじみの個包装の中に。この後の箱詰め、包装、ダンボールへの積み込み工程などはオートメーションです。

パイを箱に入れてふたをかぶせる作業はエアの吸引力を使います。デリケートなパイを壊さず、落とさず、絶妙な力加減で箱へと移すのが難しいのだとか。

ダンボールに詰められたうなぎパイはエレベーターで2階に上がり、ロボットアームがパレットに積んでいきます。

包装紙に包まれたあとは段ボール箱に入れられて、倉庫まで運ばれていきます。これらの工程も機械で行われています。

シアタールーム&立体展示

一連の工程を見学した後は、シアタールームへ。

約10分ほどのビデオを見て、これまでの工程をおさらいします。ちなみに、このビデオは一定間隔で放映されているので自由見学で来ても見ることができます。

「うなぎの寝床」ではうなぎパイ誕生秘話を知ることができます。

シアタールームから「うなぎの寝床」を模した狭くて暗い通路を抜けると、等身大うなぎパイとの撮影コーナーがあります。

比較するものがないのでわかりにくいですが、高さ2mぐらいあります。

「うなぎの寝床」では特にくわしい説明はありませんでしたが、ここは自由見学コースなので後から自由に見て回れます。

窯出しうなぎパイで一服

ツアーの最後は窯出しうなぎパイの実食。

併設のうなぎパイカフェへと案内され、座席につきます。テーブルの上にはお土産のうなぎパイミニとドリンク注文用のプレート、そしてうなぎパイ風のおしぼりが。おしぼりの色まで合わせているところにこだわりを感じます。

ほどなく、鉄板に乗せられたうなぎパイミニが運ばれてきて、参加者の前で小分けにされていきます。

窯出しなので「アツアツ」をイメージしてましたが、手に取った感触は「ホカホカ」という印象です。食感はしっとり。温かいこともあってかバターの香りと甘味が強く感じられます。

貴重な窯出しうなぎパイを食べて満足していると、2枚目が登場。もう1枚あるとは思ってなかったのでこれは嬉しいです。

2枚目はお皿に乗せられての提供。こちらも窯出しですが、鉄板から取り出してしばらく置いたものだとか。1枚目と違って、こちらはサクサク。いつものうなぎパイに近いですが、まだあったかくて、1枚目よりも口当たりが軽く感じます。

お皿にはうなぎパイにちなんだメッセージが。ちなみに1枚ずつ違うメッセージになっています。

2枚目の提供が終わったところでツアーは終了。コンシェルジュのご挨拶のあとは、このままカフェでくつろぐこともできるし、見学コースに戻ることもできます。

「夜のお菓子」の真相

うなぎパイはかつて「夜のお菓子」というキャッチフレーズで売られていました。うなぎ=精力増強というイメージからか、そういう系のお菓子と思われがちですが、それは誤解です。

実は、「おみやげに買って帰ったうなぎパイをその日の夜に家族で召し上がっていただきたい」という当時の社長の純粋な想いとして出てきたフレーズが「夜のお菓子」だったのです。

時は1960年代の高度経済成長期。新幹線の登場やマイカーブームも相まって、出張やレジャーで人々の動きは活発になりました。一方で、夜は家族全員がそろって夕食を取り、その後も茶の間(リビング)で過ごすというのが一般的な時代でもありました。

夕食後の一家団欒のお供にどうぞ、という意味での「夜のお菓子」でしたが、多くの人があらぬ方向の解釈をしたようです。

とはいえ、インターネットもSNSもない時代に世に広まったこの意味深なキャッチフレーズ。その効果は絶大で、会社側もこれを訂正しようとはしませんでした。

幸か不幸か、当時の社長の想いとはまったく異なった形で世に知れ渡っていくことになったのです。

うなぎパイ、本当の秘密

すべてがオープンになっているようですが、この中に説明されていない工程が1つあります。

ツアーでは実際の製造ラインを見ながらコンシェルジュが丁寧に説明してくれました。また、見学コースでは隠し味にニンニクを使っていることや、開発秘話などの裏話も知ることができました。

一見、うなぎパイのすべてが語られているように思えますが、説明のなかった工程が1つだけあります。

説明ボードでも触れられていません。

それは生地からパイの形に切っていくところ。

工場見学では生地作りは公開されていませんが、シアタールームの映像では生地が完成するまでの作業風景がしっかりと映っています。

しかし、生地が完成した次の場面は、すでに切られた材料がオーブンを通過しているところから始まります。生地から1枚ずつパイを切り出す工程にものすごい技術が隠されているのか、それとも、説明するほどでもない一般的な作業なのか?

ここにも生地から切り出す工程はない。

これほどオープンに製造工程を紹介しているのにもかかわらず、切り出す工程については不自然なまでに触れられていないのが気になります。

実は、その存在が隠されている切り出しの工程が最大の秘密なのかもしれません。

おみやげの持ち帰りは慎重に

売店にはうなぎパイ以外のお菓子もたくさんあります。

ツアーを楽しんだら直営のショップでお買い物ができます。

一言でうなぎパイといっても、スタンダード、ミニ、ナッツ入り、そしてブランデー入りのV.S.O.P.の4種類があります。ちなみにV.S.O.P.のキャッチフレーズは「真夜中のお菓子」です。

せっかく来たならうなぎパイを買って帰りたいところですが、持ち帰りには注意が必要です。

バイクの場合、普通に走っているだけでも荷物には結構な振動が伝わっています。さらにコーナーでは右に左に傾いたり、段差を乗り越えたりで衝撃が加わると、かなりの確率で割れます。

悲しいことにうなぎパイはツーリングのおみやげには向いてない部類のお菓子なのです。実際、壊れやすいことなどを理由に通信販売の取り扱いが中止されています。(2024年3月現在)

買って帰る際は衝撃が伝わらないように収納を工夫して、細心の注意を払って走りましょう。

うなぎパイの包装紙柄のキャリーケースも販売。ぱっと見気づかないのがオシャレ。

まとめ

うなぎパイカフェの風景。照明がうなぎパイでデコレーションされています。

うなぎパイファクトリーは「学ぶ」「食べる」「買う」という旅の要素が一か所に詰まっているので、ツーリングの目的地としてはかなりおすすめです。

無料の工場見学はもちろんのこと、カフェで休憩したり、お土産を買ったりと、道の駅のような感覚で何度も訪れたくなるような場所です。

うなぎパイファクトリーの他にも、静岡から名古屋にかけてのエリアには企業関連の見学スポットがたくさんあります。たまにはバイクを降りて、ゆっくりと学ぶ機会をつくるのもいいですね。

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