あこがれの北海道ツーリング
雄大な自然、どこまでも続く直線道路、新鮮な海産物とバラエティーに富んだ食事の数々、そして温泉や絶景キャンプ場など、北海道にはライダーたちを魅了する要素がたくさん詰まっています。
ツーリングしたい都道府県の人気投票などでは、北海道は常にダントツの1位です。それは日本に「ツーリング」という言葉が定着してきた頃からすでにそうだったかもしれません。
今から約40年前、1980年代のバイクブームの最中、北海道にやってくるライダーたちを「ミツバチ族」と呼んでいた時期がありました。
春から夏にかけてブンブンとエンジン音を立てて、たくさんのライダーがやって来る姿をミツバチに例えた言葉です。そんな前から北海道はすでに大人気のツーリングスポットだったのです。
以前はフェリーか自走の二択しかなかった
北海道ツーリングに行く手段として、長距離フェリーを使うか、自走して行くか?という議論がずいぶん昔から繰り返されています。
長距離フェリーは関西、中部、関東のいずれかの港から出航して、主に苫小牧に上陸するパターン。時間はかかるけど、身体の負担が少ないのがメリットです。
自走の場合は、青森まで走って最後だけフェリーを使うというパターン。津軽海峡だけはフェリーを使いますが、より短い時間で北海道にたどり着けるのがメリットです。一方で、身体への負担が大きいので体力勝負になってきます。
結局、青森までの高速代とガソリン代がかかるし、北海道に到着したときに疲れ果ててちゃ意味がないという理由で長距離フェリーに軍配が上がりがちなこの議論。でも、フェリーだと移動だけで2日以上かかるから、休みの自由がきかないサラリーマンだと難しいよね~ってオチで終わります。
学生ならまだしも、お休みがカレンダーどおりのサラリーマンの場合、長期で休めるのは年末年始、ゴールデンウイーク、お盆休みぐらい。
実質、バイクで北海道を走れるのはゴールデンウイークとお盆期間しかなく、しかもピークシーズンなのでフェリーや宿の料金も高くつきます。
高いお金を払って束の間の北海道を楽しむか、意を決して会社から長期休暇を勝ち取るか?
このような背景により、サラリーマンにとって北海道ツーリングに行くことは非常にハードルが高く、まさに「あこがれ」の存在でした。
レンタルバイクという新しい選択肢
そんな中、レンタルバイクが新しいツーリングのスタイルとして確立されつつあります。
単身、飛行機で北海道へ移動して、現地だけバイクを借りてツーリングというものです。この手段だと北海道往復の時間が最小限に留められます。
「自分のマシンじゃなきゃ嫌だ!」という方にはおすすめできませんが、とりあえず北海道ツーリングを体験してみたいなら、時間を最大限に活用できるレンタルバイクを使わない手はないでしょう。
レンタルバイクのメリット
フェリー、自走といった従来のアクセス方法と比べて、レンタルバイクにはどんなメリットがあるかを挙げていきます。
時間を最大限に活用できる
北海道の往復に飛行機が使えるので、最短でも移動に往復2日かかっていたのが半日ぐらいに短縮できます。
計画次第では現地到着後すぐにレンタルして、帰りのフライト直前に返却するといったことも可能です。
好きなバイクに乗ることができる
大排気量バイクやニューモデルなど、普段乗る機会がないバイクを運転できるのもレンタルバイクの魅力です。
自分のマシン以外に乗ってみることで、メーカーやモデルによるバイクの性格の違いを楽しむことができます。
不慣れな車両での無理は禁物ですが、いろんなバイクに乗ることでライディングの経験値も上がります。
体力を温存できる
北海道の行き帰りがバイク移動ではなくなるので、当然楽になります。帰ってからの洗車やメンテからも解放されるので気が楽です。
デメリットだってある
出発/返却時間の制約がある
お店が開いている時間にしか出発/返却ができません。大体は9時~10時に開店し、返却は17時~19時ぐらいです。
たとえば、1泊2日で借りる場合、9時から予約しても手続きや荷物の積み込みなどで、早くても9時半ぐらいの出発になります。これはツーリングとしてはやや遅めのスタートになるかと思います。
また、返却日は延長料金がかからないように時間厳守で行動しなければなりません。あまり遠出してしまうと、返却日はお店への移動だけで終わってしまうなんてことにもなりかねないので、しっかりとプランを練る必要があります。
お店へのアクセスがよくない場合もある
レンタルバイクはホンダドリーム、YSPなどのディーラーや街中のバイクショップがサービスの一環として提供していることがほとんどです。
普段はクルマやバイクで行くようなお店なので、公共交通機関でのアクセスが不便な場合もあります。お店までのアクセスはよく調べておきましょう。
移動の荷物・バイクへの積載
バイクに乗る以上、ヘルメット、ウェア、ブーツなどの用品が必要です。レンタルバイクでは、現地への移動とバイクへの積載でこれらの荷物をどうするかについて非常に頭を悩ませます。
くわしくは後述しますが、とにかく荷物が多くなります。そして、それらをバイクに積んで回らないといけないので収納性、積載性に優れたバッグが必要です。
どこでレンタルするの?
代表的なレンタルバイクサービスを紹介します。各社ともに特色があるので期間、目的地、車両に応じて使い分けましょう。
レンタル819
全国規模で展開しているレンタルバイクサービスです。レンタル車両も多彩で、ハーレーやBMWなどの輸入車も借りられます。
HondaGoレンタルバイク
ホンダが運営するレンタルバイクサービスです。ホンダの最新モデルをレンタルできるのが最大の魅力です。
ヤマハ バイクレンタル
ヤマハが運営するレンタルバイクサービスです。こちらはヤマハの最新モデルをレンタルできるのが魅力です。
モトオーク レンタルバイク
Jネットレンタカーグループが手掛けるレンタルバイクサービスです。レンタカーの店舗と併設しているところもあって利便性が高いです。また料金が比較的安いのも魅力。
各サービスの特長
サービス | レンタル819 | HondaGo | ヤマハ | モトオーク | |
---|---|---|---|---|---|
道内の所在地 (カッコ内は店舗数) | 札幌 (3) 新千歳空港 (2) 北見 (1) 函館 (1) | 札幌 (2) 北見 (1) 旭川 (1) 帯広 (1) 小樽 (1) | 札幌 (2) 旭川 (1) 帯広 (1) | 札幌 (3) 新千歳空港 (2) | |
レンタル車両 | ホンダ ヤマハ スズキ カワサキ 輸入車 | ホンダ | ヤマハ | ホンダ ヤマハ スズキ カワサキ 輸入車 | |
用品レンタル | ヘルメット | ○ | ○ | ○ | ○ |
ジャケット | – | ○ | ○ | – | |
グローブ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
レインウェア | – | – | ○ | ○ | |
胸部プロテクタ | – | ○ | – | – | |
盗難防止用ロック | ○ | – | ○ | ○ | |
ツーリングバッグ/ハードケース | ○ | – | – | ○ | |
ツーリングネット | ○ | – | – | – | |
スマホホルダー | ○ | – | – | ○ | |
キャンプ用品(店舗限定) | △ 期間限定 | ○ | ○ | ○ | |
料金シミュレーション (国産250ccクラス補償なし) | 1泊2日 (30時間) | 23,900 | 22,000 | 22,300 | 19,800 |
2泊3日 (54時間) | 33,700 | 25,000 | 31,600 | 29,300 | |
3泊4日 (78時間) | 43,500 | 34,000 | 40,900 | 38,800 |
※店舗によってはレンタルできない用品があります。
レンタルバイクだと安くなる?
最も気になる金額をシミュレーションしてみましょう。
日本の真ん中、名古屋からの発着で、8月のピークシーズンに250ccクラスで北海道をツーリングする場合で試算します。なお、現地滞在費(宿泊費、ガソリン代、高速代)は含まれていません。
費用の比較(名古屋発着、現地2泊3日の場合)
アクセス手段 | 費目 | 往復の費用 | 総額 | 備考 |
---|---|---|---|---|
フェリー (苫小牧着) | フェリー運賃 (旅客+バイク) | 56,430 | 56,430 | 名古屋⇔苫小牧(往復割引適用) |
自走+フェリー (苫小牧まで) | 高速料金 | 29,540 | 57,050 | 名古屋⇔苫小牧中央(ETC利用) |
ガソリン代 | 17,500 | 25km/L、1Lあたり175円として | ||
フェリー運賃 (旅客+バイク) | 10,010 | 青森⇔函館(往復割引適用) | ||
レンタルバイク (札幌出発) | 航空券 | 76,000 | 102,980 | Peach利用(バリューピーチ適用) |
電車代 | 1,980 | 空港⇔札幌 | ||
レンタル料金 (補償なし) | 25,000 | HondaGo(札幌店) |
「やっぱりレンタルバイクの方が高い!」となるのですが、費用の内訳をよく見てください。
約7割が航空券の代金になっているのに注目です。逆を言えば、航空券さえ安く買えれば他のアクセス手段と肩を並べてくる可能性があります。
では、ピークシーズンを外した週末の場合で試算してみます。
ピークシーズンを外した週末でレンタルバイク利用の場合
アクセス手段 | 費目 | 往復の費用 | 総額 | 備考 |
---|---|---|---|---|
レンタルバイク (札幌出発) | 航空券 | 30,000 | 56,980 | Peach利用(バリューピーチ適用) |
電車代 | 1,980 | 空港⇔札幌 | ||
レンタル料金 (補償なし) | 25,000 | HondaGo(札幌店) |
航空券が約半値となり、他のアクセス手段とほぼ変わらなくなりました。
「いやいや、ピークシーズンじゃないと長い休みが取れないんだよ」とおっしゃる方、レンタルバイクのメリットを思い出してください。
「時間を最大限に活用できる」というのがレンタルバイクの最大のメリット。使える時間をフルに生かせば、わざわざ料金が高くて人が多いピークシーズンを選ぶ必要はないのです。
レンタルバイクは「タイパ」最強
それでは、所要時間という切り口でみてみましょう。こちらも日本の真ん中、名古屋発着でシミュレーションします。
名古屋発着、現地2泊3日の場合
水色が北海道までの移動の時間を表しています。
出発地や交通機関のタイムテーブルによっては前後するのであくまで参考ですが、結果は以下のとおりです。
- フェリー 7日
- 自走+フェリー 5日
- レンタルバイク 3日
現地滞在時間はほぼ同じなのに、アクセス手段の違いでこれだけの日数の差が生じます。
レンタルバイクは中部空港発着の場合です。便のめぐりあわせにもよりますが、午前便で現地入りすれば、その日の午後には走り出せる算段です。
一方、フェリーだと往復の移動だけで約3日。愛車で北海道を駆けることができるのは魅力ですが、とても時間がかかります。
自走+フェリーの場合、初日に何とか函館行きのフェリーのりばまでたどり着けます。翌日深夜に函館に到着し、そこから札幌周辺まで移動。夜が明けるといよいよ本番の北海道ツーリングが始まります。
前日に1000km以上走り通しで、睡眠はフェリーの中での数時間しかない状態でのスタート。楽しめる余裕が残っているか不安です。また、かなりの強行軍なので体調不良になったり、事故のリスクが高まるおそれがあります。
以上から、レンタルバイクの強みは所要日数が少なくて済むことにあります。
所要日数が少ないことで、単純に食費や宿泊費も抑えられるし、体力・気力も充実した状態でツーリングが楽しめるという副次的なメリットも生まれます。
北海道ツーリングはレンタルバイクがベストか?
「とりあえず北海道ツーリングを体験したい」「走ったことあるけど、もう一度行きたい」といった、気軽に北海道ツーリングを楽しみたい方にはレンタルバイクをおすすめします。
一方で「北海道ツーリングは自分のマシンで走るからこそ感動するんだよ」という方にとっては、レンタルバイクはそもそもありえない選択肢です。
特に北海道ツーリングを経験したことがない場合、「はじめての北海道ツーリングを別のマシンで走るとはけしからん!(怒)」という自車への愛情が強い方もいるでしょう。
この一種の『浮気』を割り切ってできるかどうか?これによってレンタルバイクが選択肢に入ってくるかどうかが決まります。
ただ、いくら自車への愛情が強い人でも、いざバイクに跨れば普通にテンションが上がってしまうのがライダーの性。
ましてやそれが北海道なら…、もう答えは出ているかもしれません。
まとめ
まとめるとこんな感じです。
- 自分のバイクにこだわらなければレンタルバイクがベスト
- 航空券を安く上げれば、従来のアクセス手段と費用は変わらない
- 「タイパ」が良いのでピークシーズンを外して計画ができる
- 所要日数が少ないので食費と宿泊費が少なくて済む
かつてサラリーマンにとってあこがれだった北海道ツーリング。今はLCCとレンタルバイクの組み合わせによって長期休暇でなくても楽しめるようになり、実現可能なレジャーになってきています。
そのための第一条件は航空券を安く手に入れること。そして次に、現地滞在ができるだけ長くなるように便をアレンジすることです。
ただ、レンタルバイクでのツーリングは普段とはちょっと違うのでコツがいります。そのあたりについてはコチラ↓で説明していきます。
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