タウシュベツ橋は約70年前に役目を終えたコンクリート製の橋。
北海道ツーリングでもよく紹介される有名スポットですが、アクセスするための林道にゲートが設置されているため気軽に立ち寄ることができません。
今回は橋を間近に見ることができる見学ツアーと、個人で訪れる場合の方法についてご紹介します。
なぜ「幻の橋」?

タウシュベツ橋の建設は1937年。国鉄士幌線のタウシュベツ川にかかる全長130mのアーチ橋として誕生しました。
1955年、下流に糠平ダムが建設されることにともない士幌線はルートを変更。その影響でタウシュベツ橋はわずか18年で役目を終えることになりました。
やがてタウシュベツ橋はダム湖となった糠平湖に沈みますが、発電による放流で水位が下がると現れるようになります。
毎年、年明けごろに氷の中からゆっくりと姿を現し、秋からは水の中に消えて、再び冬の氷に閉ざされるというサイクルを繰り返しています。
年間を通じてその姿を見る機会が限られていることから、いつしか「幻の橋」と呼ばれるようになりました。
見学ツアー

タウシュベツ橋はアクセスする林道にゲートが設置されているため簡単に近づくことができません。
最も手軽に見学するには、ひがし大雪自然ガイドセンターが主催するツアーへの参加をおすすめします。
ツアーは1日3回。早朝、昼間、夕方で開催されます。完全予約制で定員は1回10人程度。参加費は5,000円(2025年現在)です。
現地までの交通、長靴のレンタル、ガイドさんのくわしい説明まですべて含まれています。
ここからは見学ツアーの一連の流れを紹介していきます。
集合

今回参加したのは早朝ツアー。集合は朝5:30とかなり早いので糠平温泉郷の宿に前泊しました。
集合場所は温泉郷の中心にある糠平温泉文化ホール。宿からは徒歩圏内です。受付と代金の支払いを済ませると、長靴に履き替えるよう指示されます。
ホールの中はタウシュベツ橋の歴史や近年の状況をまとめた写真集などが展示されています。ツアー開始の時間まで過去のタウシュベツ橋の姿を拝見します。
車で移動

参加者が全員そろったところで注意事項とツアーの大まかな流れについて説明を受けます。その後、2台のワゴン車に分乗してタウシュベツ橋へ。
約10分のドライブの間、ガイドさんがタウシュベツ橋の歴史などについてお話しをしてくれます。
ゲートを抜けて森の中を進む

R273から脇道の林道に入っていくと例のゲートが現れます。ゲートには鍵が付いていて関係者以外の車両は入れません。
ゲートを過ぎてからはフラットダートの道が続きます。少し厄介な場所はありますが、車でも通れるのでアドベンチャーバイクなら余裕でしょう。
林道脇にはかつてタウシュベツ橋に続いていた士幌線の旧ルート跡がありますが、説明されないと気づかないほどです。
4kmほど進んで開けた場所に到着し、車を降ります。ここから200m歩くとタウシュベツ橋です。

橋までの道のりは整備されているものの、倒木が折り重なっている場所があったりします。
実は、これらは糠平湖に漂っていた流木。毎年、水位が増すと岸辺から流されてきて歩道をふさぐのだとか。
なので、毎年、雪解け後はまず流木の撤去作業から始まるそうです。
タウシュベツ橋を間近で見る

森を抜けるとタウシュベツ橋の真正面に出てきます。糠平湖の景色に見とれて最初は気づきませんでした。
橋の上にレールはなく、コンクリートの型枠の中は大きな石が積みあがっています。これは当時、工事費削減と工期短縮を目指したためだとか。
とりあえず外枠をコンクリートで作って、中は現場で採れる石を詰めたそうです。
自由行動

ここから1時間ほど自由行動になります。ガイドさんが向こう岸まで行けるというのでついていきます。
向こう岸に行くにはタウシュベツ川を横断しますが、このときはまだ小川程度で歩いて渡河できました。
横から見ると、崩壊が進んでいることがよくわかります。

反対側に行くには多少のアップダウンはありますが、小径になっているので歩きやすいです。ただ、砂利やぬかるみで足場が不安定な場所があるので気が抜けません。

撤収・解散

約1時間ほど散策してタウシュベツ橋に別れを告げます。再び森の中を抜け、車に乗り込みます。帰りの車内でもガイドさんの説明は続きます。
R273沿いにはタウシュベツ橋の展望台があり、糠平湖をはさんで約700m先にタウシュベツ橋を見ることができます。

ただ、この展望台にたどり着くには森の中を180m歩く必要があり、最近はクマの出没も報告されているので注意が必要とか。
ほどなく糠平温泉文化ホールに到着し、長靴を履き替えたらツアーは終了です。
個人で行けなくもない

タウシュベツ橋にアクセスする林道には鍵付きのゲートが設置されていて、自由に出入りすることができません。
個人で行く場合は、上士幌観光協会のウェブサイトでゲートの鍵を予約する必要があります。
鍵の予約は1か月前から可能で、1日15組限定(バイクは1組3台まで)。また、義務ではありませんが、協力金2,000円の寄付をお願いされるみたいです。
鍵はタウシュベツ橋から約35km離れた「道の駅 かみしほろ」での受け渡しとなります。また、ここで長靴と熊鈴のレンタルもできるのでかならず借りて行きましょう。

現地はぬかるみが多く、渡河が必要な場面も出てくるので長靴は必須。また、ヒグマの目撃情報も相次いでいるため、できるだけ遭遇リスクを減らすことも重要です。
崩落は時間の問題

橋の放棄から70年。毎年ダム湖に沈んでは現れてを繰り返してきたタウシュベツ橋。
地元でも崩壊の日は近いと言われています。ガイドさんによると、アーチ部分が1箇所でも欠けたら、そこからは加速度的に崩壊していくとか。
地元の有志や町をあげて保存の動きもありましたが、実現は難しそうです。

橋自体は上士幌町が買い取っていますが、立地はJ-POWER(電源開発株式会社)が管理する糠平ダムの敷地内にあります。
J-POWERも発電の邪魔になってないから放置しているというスタンスで、保存に積極的ではありません。つまり国鉄時代の「廃墟」という扱いです。
この状況に加えて費用や維持管理の難しさもあって、残念ながらこのまま崩落を待つしかない状況です。
まとめ

タウシュベツ橋へは単独で行けなくもないですが、個人的にはツアーに参加することをおすすめします。
定員10人ほどなのでそんなに混雑することはないですし、1人で参加している人も結構います。
一番の魅力はガイドさんのくわしい説明。歴史や背景を知ることで現在の橋の姿にも重みを感じることができます。
また、タウシュベツ橋周辺は電波が届きにくく、クマも出没するので、ある程度まとまった人数で行動している方が安心感があります。

北海道の大自然に還りつつあるタウシュベツ橋。アーチが連なる美しい姿を見られるのもあと数年かもしれません。
その姿が失われる前に、実際に現地を訪れて目に焼き付けておくのもいい思い出になるでしょう。
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